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「おいおい、そんなに驚くな」
倒れそうになる私の背中を慌てて支えてくれる燈也君。
「答えろよ、なぎさ」
そんな瞳で聞かれたら……
ううん、違う。私もずっと、そう願ってきた──
「お、お願いします」
ついつい居住まいを正してお辞儀なんかしてしまう。
「なんだよ、商談みたいじゃないか」
そう、燈也君は私の大好きな笑顔を見せて──
「新婚旅行はオーストラリアだな」
なんて言った。どうしてそこまで、話が飛ぶの! 嬉しいけど、こういうことは順序というものが……。でも、私も、同じ気持ち。
「気が早すぎるよ」
恥ずかしくて反論する私に──
「早くねぇよ、俺、十二年間も待ったから」
そう言って、もう一度降ってくる口づけに、私は目を閉じることしかできないのです。
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