月光 参

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 夜の空は快晴。星が綺麗だ。ニュースで明日の天気も晴れだって言ってたから、花火大会は無事行われそう。  八月末に宮島で行われる花火大会は、地元の大きな花火大会の一つで、県内外から多くの人が訪れる。この日、島にある旅館は予約がいっぱいで、なかなか取れないんだとか。  昼から行って、水族館に入ったり、弥山に登ってみてもいいかも――なんてメッセージがグループトークに入っている。送り主は心晴だ。  私ももちろん賛成! 賛同の意を示すと、他のみんなも次々に返信が入ってくる。結局、朝の九時に宮島港に集まることになった。  そして私は――  炎天下の中、全速力で走っています。というのも、余裕を持って早く家を出ていたのに、家を出て少ししたところで、サンダルの紐が切れてしまったのだ。慌てて家に戻って、スニーカーに履き替えてきた。  可愛いワンピースにサンダル……のつもりが、スニーカーにワンピ―スはしっくりこなくて、まさかの全身総着替え。  お母さんに遅れるわよとせかされながら、私はほっそりとしたデニムのクロップドパンツに白いカットソーと言う無難すぎる出で立ちで駅に向かう。  もう、路面電車ではとてもじゃないけれど間に合わないので、時短ができるJRで行くことにしたのだ。  必死に走って、電車に駆け込む。車体がゆっくりと動き出したところで、私はふぅっと息をついた。クーラーの風が、汗をかいた体に涼しい──けれど、このままいたら風邪をひきそう。少し体が冷えたら風の当たらない位置に移動して、みんなに少し遅れそう──と連絡を入れてから、車窓を眺めることにした。  流れていく景色――住宅街を抜けて、次第に海が見えてくる。穏やかに凪いだ海面にぽこぽこと小さな島が浮かんで見えてる。確か地理の先生が属する島の数は百四十二個あるって言っていたっけ……  なんて車窓を眺めていると、あっという間に宮島についてしまった。さすが! 路面電車よりもずっと早い!
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