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健ちゃんと燈也君はすごい白熱した戦いをしていた。僅差で勝ったのは燈也君。健ちゃんはすごく悔しそうにしていたけど、清々しく燈也君を讃えていて、そこがまた爽やかだなって思った。
女子ではなっちゃんが上手で、何度かスペアを出していて、心晴と私が良い勝負。
初めてのボーリングだけど、すごく楽しかった!
「あー、トイレ地下なんだ! 私ちょっと行ってくる」
「あー、私も私も!」
一階に降りると、キョロキョロしていた心晴がトイレの文字を見つけて階段を降り始めた。なっちゃんもそれに続く。上の階のトイレは修理中で、使えるの地下のトイレだけみたいだ。
「やっば、俺、マフラー忘れてきた! ちょっと待ってて」
健ちゃんがボーリング場に戻っていくと、一階には私と燈也君が取り残された。
私は燈也君に話しかける。
「燈也君ボーリングもめっちゃ上手だね」
「親が好きでけっこう練習させられたからな」
「私も練習しようかなー」
「今よりは少しマシになるかもな」
「次はもう少しちゃんと投げられるようになりたいな。ボーリング難しいけど楽しかったよ~」
みんなはなかなか帰ってこない。トイレ、混んでるのかな?
「あれ、取ってやろうか?」
唐突に燈也君がそんなことを言う。視線の先にあったのは私がさっき見ていたうさぎのキーホルダーだ。
「欲しいって顔に書いてる」
「書いてないよ! 欲しいけど!」
「よし、待ってる間に取ってやる。何色がいい?」
燈也君はUFOキャッチャー台の前に立つ。問われて私は慌てて手前の水色のうさぎを指さした。
「み、水色」
私、こういうの苦手だ。取れたためしがないよ。じっと見つめていると、アームが動いて、水色のうさぎがころんと下に落ちてくる。
「すごい! 本当に取れた!」
「ほら、やるよ」
燈也君はうさぎをつまんで、私に手渡してくれる。可愛いうさぎのキーホルダーが私の掌に乗る。
「いいの?」
「おまえのために取ったし。俺が持っててもな……」
「ありがとう! 大切にする!」
「心晴と奈緒には内緒な。たくさん取れそうにねぇし」
燈也君は私の頭をぽんぽんって叩いてから階段のところに戻る。少ししてから健ちゃんが駆け下りてきた。
「見つかんなくて探してたら、受付に持っていかれてた」
「あって良かったね~」
「うん、焦ったなー」
心晴となっちゃんも戻ってくる。トイレの数が少なくてとても混んでいたらしい。外に出ると、冷たい風が頬を撫でて気持ちが良かった。ちょっと火照っていたみたい。体を動かしたからかな?
パルコ前のスタバに入って二階のソファ席で話しながら時間が来るのを待った。イルミネーションの点灯は五時半、外はだんだんと暗くなっていく。
並木通りを通って平和大通りへ向かう。並木通りは街路樹に光が灯ってすごくロマンティックなんだよね。思わず上を見上げる。光に包まれているみたいだ。
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