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結局、私は燈也君に待ち合わせ場所まで運んでもらってしまった。
待っている間に心晴に連絡を取ってみるけど……既読にすらならない。
なんだか気まずい空気が流れてしまって、沈黙のまま三人で待っていると、ほどなくして迎えの車が来た。
「待たせて悪かったね、さぁ乗りな」
相変わらず、気さくな健ちゃんのお父さん。健ちゃんは助手席に、私と燈也君は後部座席に乗り込んだのだけれど……
健ちゃんのお父さんが運転してくれる車内で、私たちは三人、なんとも言えない居心地の悪さを感じていた。
いつもは仲の良い健ちゃんと燈也君がなぜか無言。私も帰ってしまった心晴から、何の返信もないので、もやもやしていた。
心晴は告白できたのだろうか、できなかったのだろうか……
どちらにせよ、心晴は傷ついて帰ってしまったのだろう。もしも告白していたのら――燈也君から良い返事を貰えていないことは容易に想像できた。
「健ちゃんのお父さん、遅くに送ってくださってありがとうございました。足も痛かったから、すごく助かりました。健ちゃん、燈也君、また新学期」
「またね、なぎさ」
「じゃあな」
そう言ってぎくしゃくしたまま、健ちゃんのお家の車から降りて、二人と別れると、さっき、私を抱えてくれていた燈也君の温もりを思い出して――涙が出てきた。
一度泣いてしまうと、もう止まらなくなって、私は家に入らず、しばらく外で泣いた。
どうして、気が付かなかったことにできないんだろう。どうして、忘れることができないんだろう。どうして、心晴と同じ人を好きになってしまったんだろう――
答えのない問いに、私は泣くことしかできなかった。
そうして、少し香り始めた秋の風の匂いと共に、私たちの夏休みは終わりを迎えようとしていた。
正直、新学期を迎えるのが怖い。
どんな顔をして、心晴に会ったらいいんだろう。
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