真相

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「ダイくん……」  お茶をカップに注いでいると、不安げな表情を浮かべたユーリが、キッチンに入ってきた。 「お兄さんは?」 「リビングのソファーに座ってもらっている。その……お兄さんは、最上位種以外はゴミだ、って言うのが口癖の人なんだ。久々に会ったんだけど、今もそれは変わってなかった。それで……」 「あぁ、分かった。俺は自分の部屋に隠れているさ」  ユーリが告げたいことが分かり、気にするなというように笑いかけながら言う。 「そうじゃないんだ。ダイくんに側にいて欲しいんだ。今度こそ、本当にダイくんを傷つけてしまうって分かっているけど、僕ひとりじゃ怖くて堪らないんだ」  純白の耳を垂れ下げ、小刻みに体を震わせはじめたユーリ。  こんなに怯えさせてしまうようなことを、過去に兄はユーリにしたというのか? この様子だと、部屋に辿り着くまでの間にも、ユーリが傷つくようなことがあったのだろう。  兄に対して、沸々と怒りが込み上げてくる。 「大丈夫だ。俺が側にいるから」  ユーリを苦しみから救いだしてやりたくて、恐怖で強張ってしまっている背中を擦ってやる。 「ユーリ、三色なんぞに触れさせるなんて、お前もそこまで落ちぶれたか」  肌を蛆虫に這い回られるような不快さを与えてくる嘲った声が聞こえ、声がした方に振り向く。すると、キッチンの入り口に立つ三十路くらいの男が、汚物を見るようにこちらを見ていた。 「お兄さん……」  熱波の影響で殆どの水分が蒸発してしまったような掠れた声で、そう呟いたユーリ。震えが収まってきた体が、またブルブルと震えだす。 「家政夫ごときに服など与えて、お前は聖人気取りか。奴隷は奴隷らしく、薄汚れた腰巻きひとつで十分だろうが」  鼻で笑いながら、ユーリがくれた服を着る俺を、見下した目で見てくる兄。  兄の顔の作りは、確かにユーリに似ている。だが、本当に血を分けた兄弟なのかと、疑いたくなる。 「お前の脳が欠陥品だとは分かっていたが、ここまでとはな。見た目だけは並み以上だったことだけが救いだな。そのお陰で、脳みそがなくてもできる着せ替え人形ができたんだからな」  暴言を吐いた兄が、下品な笑い声をあげる。  内面から溢れだす輝きがあるから、ユーリは人気モデルになれたのだ。ユーリと外見が似ていても、内面が腐っている兄には、羨望や情景からくる嫉妬を感じないのだから。
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