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(目的は達成。美代子は当然のこと、健吾をサッサと処分した)
収まらないのは香澄だ。
K大学の法学部を蹴って、国立大学の法学部に進学。
美代子とは其れっきりに為った。
その顔も見たくない女が、今週の始めに職場に香澄を訪ねて来た。
実に二十年ぶりの再会。
相変わらず色が白くて小柄な美人、おまけにえらく艶っぽくなっている。
美しい銀座の華に為った美代子は、高級サロンを持っているらしい。
その美代子は。香澄が東京地方検察局(長いので以後、東京地検の略称で失礼します)の検事に為った事を、ずっと前から知っている。
それのみ為らず、七年前に結婚した事も、相手が同僚の検事だった事も知っている。
そして更には。二年後に離婚した事も、当然ながら知っている。
だから香澄は、旧姓の冬木香澄に戻った。
おまけに、その男が結婚二年目にしてカミングアウトして、今や二丁目界隈では知らぬ者の無い超有名人に為っている事も知っている。
『おかまサロン・紫苑』の名物ママにして辣腕の経営者が、その男だ。
女子高生だった昔から変わらず愛している香澄の事は、何でも知っている。
(手には入らなくとも、決して忘れたりしない)
でもその日。香澄を尋ねた目的は、ただ懐かしくて会いに来たのでは無かった。
香澄の安全を確認する為に、訪ねて来たのである。
美代子はその商売柄。パトロンとして複数の男を、常時持っている。
心に香澄が住み続けている彼女にとって、パトロン達との身体のお付き合いはスポーツの様なモノで。(汗を流して楽しんだら、終了だ)
五日前に、そのパトロンの一人がベッドの上で漏らした話の中に、香澄の名前が出て来たのだ。
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