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「馬鹿、気持ち悪いよ! 朝からそんな話、やめてよ! ああ、しばらくシチュー食べられない」
「豚骨ラーメンも無理でしょ」
「ああ、余計なこと言うなよ! 白濁のお湯って、あんな感じだったのか!」
私の頭の中には、一杯のラーメンどんぶりが浮かんでいた。
白濁したスープに箸を入れ、中身を持ちあげると、麺ではなく小さな頭蓋骨が現れる。
「東谷さんは、慌ててお湯から出て、そこらへんの草むらに、ゲーゲー吐いたらしい。持参したタオルで体の隅々まで拭いて、逃げ帰って来た。タオルは、そこらへんに投げ捨てて」
さすがに、これは他人に紹介できる温泉ではない。
東谷さんは、携帯に撮りためた写真をすべて削除して、ブログにアップすることもなかったという。
電車の車内アナウンスが、白山駅への到着を告げる。
トークショー終了の合図だ。
二人が席を立ちあがる。
私は一歩後ろへ身を引き、力づくで横の乗客を押しのけ、少年たちが通るスペースを確保してやった。
隣にいた恰幅のいい中年女性が、私の肩へ迷惑そうな視線を向けてきた。
構うものか、これは少年たちを見送る花道だ。
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