遅刻した

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「大丈夫かユッキーナ?」  一年生が言った。 「イタイヨ、イタイヨ」  それに呼応して小学生がその場にしゃがみこむ。足をさすり、棒読みに連呼する。  その様子を満足げに見つめる一年生。 「あーあ、大切な後輩をこんなにしやがって」  そしてゆらゆらと首を回しておいらを見つめる。 「キャハハハ。よくやんよなタカッシー。高校に小学生を連れてくるなんて」 「そこまでして、自分の武勇伝、教えたいのかよ」  それを他の二人が呆れたように見物している。察するにタカッシーとはこの一年生のこと。そしてユッキーナとは小学生だ。 「ゴメンよ、急いでいたからさ。……だからここで」  おいらはますます意味が分からない。このタカッシーって一年生はなにがしたいのか? そしてどうしてユッキーナという小学生を連れ込んだのか? ひとつだけ分かることは、おいらが危険だってこと。 「殺すぞ!」  タカッシーがおいらの胸ぐらを奪った。 「ざけんなよ先輩。俺はルーキーズの一員なんだぜ。ここだけの話、三年の上杉と北條をぶち殺したのは俺なのさ。ゴメンよですむと思ってる?」  そして力を籠めて上に引き上げる。おいらの小柄な身体が宙に浮き上がる、足が地面に付かずにバタバタと藻掻いた。ルーキーズってのは一年生を中心とした派閥だ。最近三年生を次々と打ち倒して、メキメキとその頭角を表してる。 「ゴメンよゴメンよ。ホントにゴメンよ。ちゃんと謝るから許してよ」 「くぅー。あんたそれでも先輩なの? 小さいから、中坊かと思ったよ」  必死に謝るが、タカッシーはますます調子に乗る。おいらは首を圧迫されて息ができない、恐怖と酸欠状態で思考が停止していた。ホントに殺されるんだと思った。
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