1人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫かユッキーナ?」
一年生が言った。
「イタイヨ、イタイヨ」
それに呼応して小学生がその場にしゃがみこむ。足をさすり、棒読みに連呼する。
その様子を満足げに見つめる一年生。
「あーあ、大切な後輩をこんなにしやがって」
そしてゆらゆらと首を回しておいらを見つめる。
「キャハハハ。よくやんよなタカッシー。高校に小学生を連れてくるなんて」
「そこまでして、自分の武勇伝、教えたいのかよ」
それを他の二人が呆れたように見物している。察するにタカッシーとはこの一年生のこと。そしてユッキーナとは小学生だ。
「ゴメンよ、急いでいたからさ。……だからここで」
おいらはますます意味が分からない。このタカッシーって一年生はなにがしたいのか? そしてどうしてユッキーナという小学生を連れ込んだのか? ひとつだけ分かることは、おいらが危険だってこと。
「殺すぞ!」
タカッシーがおいらの胸ぐらを奪った。
「ざけんなよ先輩。俺はルーキーズの一員なんだぜ。ここだけの話、三年の上杉と北條をぶち殺したのは俺なのさ。ゴメンよですむと思ってる?」
そして力を籠めて上に引き上げる。おいらの小柄な身体が宙に浮き上がる、足が地面に付かずにバタバタと藻掻いた。ルーキーズってのは一年生を中心とした派閥だ。最近三年生を次々と打ち倒して、メキメキとその頭角を表してる。
「ゴメンよゴメンよ。ホントにゴメンよ。ちゃんと謝るから許してよ」
「くぅー。あんたそれでも先輩なの? 小さいから、中坊かと思ったよ」
必死に謝るが、タカッシーはますます調子に乗る。おいらは首を圧迫されて息ができない、恐怖と酸欠状態で思考が停止していた。ホントに殺されるんだと思った。
最初のコメントを投稿しよう!