遅刻した

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「はぁ? なんだこいつ、どこのオタク野郎よ?」  しかしタカッシーにはそれが分からないようだ。キョトンと首を傾げてシュウの前に立ちはだかる。 「ここは俺らルーキーズが規制してんだよ、大体にしててめーは誰なんだ? 名を名乗れ!」  まどろむシュウを弱いと履き違えたか、おいらを弾き飛ばして悠然と歩み寄る。 「誰よって、訊いてんだよ、殺すぞ!」  そしてあろうことこか、シュウの胸ぐらを奪った。 「人に名前訊く前に、てめーで名乗るのが礼儀じゃねーのか?」  シュウが言った。対するタカッシーはヘラヘラと笑顔だ。 「大友勝治って知ってんだろ? 俺はそのマブダチでルーキー……」 「他人の名前を騙んじゃねー! 俺はてめーの名前を訊いてんだよ!」  意気揚々と名乗りを挙げるが、シュウに平手打ちを食らって後方に仰け反った。 「ば、馬鹿野郎! その人はシュウさんだぞ」  堪らず一年生が声を荒げた。 「シュウ……さん?」  それでタカッシーもようやく気付いたようだ。目の前の男が伝説のヤンキー、シュウだと。 「どうした小僧、しびれんなとか、殺すって言えよ。馬鹿じゃねぇ、ってキョトンとしてみろよ。さっきまでの威勢は空元気かぁ?」  それをシュウは、鋭い眼光だけで煽る。 「やだな、シュウさん。全部遊びっすよ。……襟元に虫が付いていたから。この虫けら、殺すぞ、なんて。……俺はシュウさんを尊敬してますから」  堪らず言い放つタカッシー。あっさりと趣旨を替える。 「なんだてめー、調子がいいな。まるっきし中坊だ」 「そんなことないっすよ。……俺は昔からシュウさん派です」 「俺には派閥なんざいらーねー」 「まぁ、そう言わずに。もちろん上納の品も差し上げますから」 「上納品か。小学校以来だな」  こうして淡々と響くシュウとタカッシーのやり取り。
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