【1】 ハイテンションとローテンション

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【1】 ハイテンションとローテンション

 テンションの高い生き物は、テンションの低い生き物の生命力を食べて生きているんじゃないだろうか?  齢34にして、なぜこんなことを考えているのかというと、ただでさえ夏期講習明けで精力皆無の体が、渋谷駅前で繰り広げられていたサンバの激しいリズムに打たれて、最早一歩も動けなくなっているからである。 (いつまでもこうしているわけにはいかない。早く行かなければ教材の印刷が……)  何とか近くの喫茶店に避難したものの、それで全ての体力を使いきり、激しい冷房も相まってどんどん体温が下がっていく。  血糖値を上げようと足掻いてキャラメルマキアートなる飲み物を頼むも、甘すぎて一口目で断念した。 (どうして渋谷駅でサンバをやっているんだ…確かあれは浅草でやるものじゃなかったか……?)  この世界には、なぜ自分のようなローテンションと、サンバのようなハイテンションが混在しているのだろう。  「両者は分かれて暮らすべきだ」という政策を掲げた大統領が現れたら、全力で支持するのだが。 「…何を考えてるんだ俺は」  頭痛までし始め、こめかみを強く押さえる。どうやら本格的に危ないらしい。  元々今日は休みであるわけだし、大人しく家に戻ろうか。いや、今日中にプリントを印刷しておかなければ後々のスケジュールに支障が出る。だから今日は疲れた体に鞭打ってここまで来たのだ。…が。
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