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「あの、何か誤解なさっているようですが…。私は、その子の父親です」
「…父親?」
「はい」
「……もしかして、1ヶ月前渋谷でしつこく佐々を追いかけていたというのは…?」
「恥ずかしながら私です…」
その時、こっちへ駆けてくる人影が見えた。その人影は手に白いビニール袋を持っていて、俺を見つけると、それを掲げて手を振った。
「倫太ー。朝ご飯買ってきてあげたわよー」
「マジでっ? サンキュー花梨っ!!」
空腹のピークだったトコに天の助け。抱え込まれた体勢のまま手を差し出すと、突然俺を支えていた力が消えた。そのまま地面に激突しそうになったのを、足を踏ん張って、最悪の事態を辛うじて回避する。
文句を言いながら顔を上げると、異様な気配を肌に感じた。
隣りを見ると、何とも言えない影を背負った義政が花梨を見ていて、花梨はビニール袋を掲げたまま少し離れた所で立ち止まり、義政に会釈をした。
「って、アレ? 何で二人共ここに居んの?」
二人を交互に見て、今まで見落としていた現実に気づく。
「倫太が歩く速度と傾向と空腹で動けなくなるまでの時間を計算して、それを元に目星をつけたのよ」
「お陰ですぐに佐々を見つけられた。前々から感じていたが、君は驚く程優秀な人間だな。鷹見君」
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