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【13】 白雪姫
「俺はまず、鷹見君に聞きたいことがある。
先程の話は、どこまで嘘なんだ?」
「嘘などついた覚えはありませんが、強いて言えば『倫太が売春するかもしれない』というくだりでしょうか。倫太は死んでも売春なんてする子じゃありませんし」
「ハァ? 俺が売春?」
「そこはいい…だが俺は後少しで、彼の父親を警察に突き出す所だったんだぞ?」
「倫太を追いかけていた怪しい男は、つまり倫太の父親だったというだけです」
「怪しい男とはひどいな花梨ちゃん…」
「それで倫太。青司さんとはちゃんと話せたの?」
子供の頃からずっと俺を見てきてくれた黒い目が、俺と同じ高さに来てそう尋ねた。ゴチャゴチャしたことが全て吹っ飛び、クリアーになる。
痛さも何も感じなかったのに、突然ぼろっと涙がこぼれた。
「俺、今日は逃げちゃいけない気がしてコイツと話したけど……でも、花梨…っ」
細い肩に抱きつくと、ふんわりと石鹸の香りがした。
花梨は俺の背中をぽんぽんとたたきながら囁いた。
「落ち着いてゆっくりと考えてごらんなさい。誰も邪魔しないから。
……もう誰も、怒ったり悲しんだり、しないから」
一粒、目から涙が落ちるごとに。
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