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一粒、心から鉛が落ちていく。
「白雪姫って、こんな感じだったのかな…」
あったかい肩の上で、ふとそんなことを思いついて呟く。
王子様のお陰で毒林檎を吐き出して、生き返ったお姫様の話。小さな頃、花梨が読み聞かせてくれた。
さっき義政が抱え込んでくれた時、心が生き返った気がした。
安心した。嬉しかった。
すごく、きもちよかった。
…それで、思い出したんだ。昔も、そう思った時があったこと。
「俺………っ」
母さんとも、花梨とも違う、大きく俺を包む腕を―――――思い出したんだ。
「父さんが、好きだ……っ」
春には花の名前を
夏には草の名前を
秋には虫の名前を
冬には星の名前を、教えてくれた。
幸せのかたまりのような甘い菓子を二人で食べた。
見たこともない綺麗な蝶々を二人で追いかけた。
「大好きなんだっ……!」
俺を産んでくれた愛しい人が悲しまないように、封印をかけた魔法。
でも、もし、本当のことを言っても笑っていてくれるなら―――――
「……よく我慢したわね。倫太」
背中を撫でる温かな手が、何度も何度も俺を許した。
その時、何かに気づいたように、花梨が顔を上げた。花梨はそのまま小さく頷くと、静かに俺から離れた。
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