【13】 白雪姫

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 一粒、心から鉛が落ちていく。 「白雪姫って、こんな感じだったのかな…」  あったかい肩の上で、ふとそんなことを思いついて呟く。  王子様のお陰で毒林檎を吐き出して、生き返ったお姫様の話。小さな頃、花梨が読み聞かせてくれた。  さっき義政が抱え込んでくれた時、心が生き返った気がした。  安心した。嬉しかった。  すごく、きもちよかった。  …それで、思い出したんだ。昔も、そう思った時があったこと。 「俺………っ」  母さんとも、花梨とも違う、大きく俺を包む腕を―――――思い出したんだ。 「父さんが、好きだ……っ」  春には花の名前を  夏には草の名前を  秋には虫の名前を  冬には星の名前を、教えてくれた。  幸せのかたまりのような甘い菓子を二人で食べた。  見たこともない綺麗な蝶々を二人で追いかけた。 「大好きなんだっ……!」  俺を産んでくれた愛しい人が悲しまないように、封印をかけた魔法。  でも、もし、本当のことを言っても笑っていてくれるなら――――― 「……よく我慢したわね。倫太」  背中を撫でる温かな手が、何度も何度も俺を許した。  その時、何かに気づいたように、花梨が顔を上げた。花梨はそのまま小さく頷くと、静かに俺から離れた。     
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