【14】 抱擁

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「残念。先生も思慮深い方ですね」  オマケを受け取るということはつまり、メインの品物も受け取るということだ。ここで鉄観音茶を受け取ったら、佐々をここへ置いてもいい(しかも末永く)と了承することになってしまう。 「でも、失礼なことを言うようですが、無駄な足掻きですよ」  初めて会った時から変わらぬ清楚な印象を与える少女が、不思議な落ち着きを纏って薄く微笑む。 「だって松倉先生、もう情が移ってしまったでしょう?」 「『ジョーが移る』? 何ソレ憑依?」  佐々だけが一人脳天気なテンションを維持し、大学生にもなった日本人にあるまじきことを口走る。  その時、今まで思いもしなかった仮説が頭を過ぎった。 「…俺はいつも、君が何故、他人に等しい俺に佐々の深い家庭事情まで話してくれるのか気になっていたが……」 「ええ。全て、こうなることを見越してのことです。責任感と優しさに満ちた先生には、ああするのが一番手っ取り早い方法かと思いまして」  鷹見君は、けろりとした顔でその仮説を肯定した。 (操られてる…操られてるのか俺は…!?) 「ですが、ここから先は私には見えません」     
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