【15】 竜虎の戦い

2/3
前へ
/69ページ
次へ
「却下します。この9年間、虎視眈々と罠を張り巡らせ続けてきたのよ。今やっと風向きが有利になってきたのに、今更引き下がるつもりは毛頭無いわ」  ぴしゃりとはねつけた鷹見君にひるむことなく、佐々は地団駄を踏んで抗議を続ける。 (鷹見君が急に恐ろしく見えてきたのは俺の気のせいだろうか……)  竜虎の戦いを前に、再び痛み始めてきたこめかみを押さえる。 「倫太。栄子おばさまの仰った通り、お互い子離れ親離れする時が来たのよ。それに、あなたにだって想い人が居るでしょう」 「は? 誰ソレ」 「佐々…いい加減、鷹見君に頼らずに自分のことは自分で考えるようにしろ。自分の好きな相手まで鷹見君に聞いてどうする」 「えーっ? だって俺分かんねぇもん」 「じゃあ、ヒントを出してあげるわ。  いつでも側に居たくて、少し肌が触れあうだけで心躍って、笑ってくれると嬉しくて、何でもないことが二人で居れば幸せに変わるような、  そんな相手を、思いつかない?」  問われた佐々は、深く考え込むように目を伏せた。その間鷹見君の方を見ると、彼女は悪戯っぽく微笑み、声には出さず語りかけてきた。  先生はどうですか? と。 「……義政?」  名を呼ばれ、腕を引かれた。  霧の先を探るような顔で、佐々は俺を見ていた。 「花梨」  俺を凝視したまま、佐々は鷹見君を呼んだ。 「何?」     
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加