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「却下します。この9年間、虎視眈々と罠を張り巡らせ続けてきたのよ。今やっと風向きが有利になってきたのに、今更引き下がるつもりは毛頭無いわ」
ぴしゃりとはねつけた鷹見君にひるむことなく、佐々は地団駄を踏んで抗議を続ける。
(鷹見君が急に恐ろしく見えてきたのは俺の気のせいだろうか……)
竜虎の戦いを前に、再び痛み始めてきたこめかみを押さえる。
「倫太。栄子おばさまの仰った通り、お互い子離れ親離れする時が来たのよ。それに、あなたにだって想い人が居るでしょう」
「は? 誰ソレ」
「佐々…いい加減、鷹見君に頼らずに自分のことは自分で考えるようにしろ。自分の好きな相手まで鷹見君に聞いてどうする」
「えーっ? だって俺分かんねぇもん」
「じゃあ、ヒントを出してあげるわ。
いつでも側に居たくて、少し肌が触れあうだけで心躍って、笑ってくれると嬉しくて、何でもないことが二人で居れば幸せに変わるような、
そんな相手を、思いつかない?」
問われた佐々は、深く考え込むように目を伏せた。その間鷹見君の方を見ると、彼女は悪戯っぽく微笑み、声には出さず語りかけてきた。
先生はどうですか? と。
「……義政?」
名を呼ばれ、腕を引かれた。
霧の先を探るような顔で、佐々は俺を見ていた。
「花梨」
俺を凝視したまま、佐々は鷹見君を呼んだ。
「何?」
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