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 そんな暗黙のルールが、いつの間にかできあがっていた。それについて不満はない。ただ、ぼんやりと日中を過ごすだけだ。  アルファが現れ、栗色の髪をした少年に声をかけた。彼は数日前に来たばかりで、まだここのルールに慣れていない。キョトンと目をまるくして、とまどいながら差し出された手を取って連れていかれる。 (話をするだけか、奉仕をさせられるのか)  どちらでもいいかと、美月は彼等から視線を外した。おそらく彼はアルファに声をかけられるのが、はじめてのはず。最初の出会いが悪いものではなければいいと、祈るともなく心に浮かべた美月の背後に気配が近づいた。 「美月」  やわらかな声音に、たっぷりと時間をかけて振り向いたのは気を持たせたいからじゃない。ただ、おっくうだっただけだ。 「会いにきたよ、美月」  口元には笑みを浮かべて、細めた目の奥には見下した色を残して、上等なスーツに身を包んだ青年が立っていた。美月はゆっくりと立ち上がる。 「財前さん」 「他人行儀だな。友則と呼んでほしいと言っているのに」  まっすぐに伸びた背筋と精悍な顔つきには自信が満ち溢れている。美月はほんのりと笑みをにじませ、わずかに首をかたむけた。 「そんな……できませんよ」     
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