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すべてのオメガたちが疲れ果てると、満足した財前は優位者の笑みで立ち上がり、美月の手を取り指先に口づけて去っていった。
「では、また」
ささやきに緩慢な動きで目を向けた美月は、わずかに唇を動かすだけで声を出さない。いかにも気だるく意識を濁していると示せば、財前はそれ以上のことをせずに帰っていく。
優秀なアルファであり、彼に望まれたいと願うオメガが多数いるのは知っていた。しかし彼は、美月の好みには合わない。隠そうとしてもにじみ出ている、オメガを下に見る雰囲気が、どうあっても気になって不快感をぬぐえなかった。
財前を気に入っているオメガたちは、それが気にならないのか、気がつかないのか。あるいはわかっていてもなお、財前を魅力あるアルファだと認識しているのか。
どうでもいいかと、美月は近づいてくる足音に耳を澄ませる。
離れていた護衛のベータたちがバスタオルを手に、それぞれのオメガを抱き上げる。己のベータの瞳に見え隠れしている情交の興奮に気づいて挑発的な顔をするものや、本当に疲れ切って身を任せているもの、疲れたふりをして身をゆだねているものたちがいる。
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