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砂生が身を乗り出す。
「おれのために? わざわざ買ってきてくれたんだ。……うわ。なんか、すっごく嬉しい。小守くん、ありがとう。嬉しい」
「ただのケーキだけどな。他にも祝いはちゃんと考える。昨日約束をしたからな」
単純で、けれど純粋に喜んでくれる砂生を見ると僕の口元は自然と綻ぶ。
僕はケーキの箱を砂生に手渡して、その前にしゃがみ込んだ。
ごほん、と一つ咳払いをする。
妙に緊張している自分に気がついて、僕は苦笑する。
自分らしくない。けれど、たまにはこんなときもあってもいい。
砂生が首を傾げていた。まるで待たされている犬のようだ。なんだか可愛い。
僕は精一杯、できる限りの笑みを浮かべて、砂生にそれを伝えた。
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