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サヤは階段で4階に向いながら、つぶやくように、
「それは、10階でしょう? もし10階が……」
その時、思わず階段を踏み外しかけ、
「ダメダメ、いらないコト言ってるからよ……」
それは、このホテルの10階の事だった。
もし午後五時を過ぎた段階で、10階全室が空室状態だと……
なぜか夕方以降になると、ロイヤルスイートに当てられている1010号室に、陰気な臭いがするため、そういう噂(うわさ)があった。
一人の清掃員が、この部屋で行方不明になった――という噂も……。
「あくまでも噂。都市伝説でしょう」
しかし、ベテランの清掃員たちでも、
「そういう時の、この部屋の作業は、手早く済ませるのよ」
と笑いながら、よく話しているのだった。
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