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だから事務所のスタッフも気を使って、いつも10階の一室には『使用』のチェックを入れていた。
やがてサヤは、4階の確認が済んだところで、休憩にして昼食を取った。
5階からの仕事を再開したのは四十分後で、いつものように順調に、タブレットにチェックを入れていった。
そして夕方ごろになり、10階に向いながら、タブレットを見て「あら?」と、思わず足を止めた。
どこの客室にも『使用』が入っていなかったからだ。
「さては、エリの奴、忘れたな……。大丈夫、大丈夫……」
サヤは、一応、九室のチェックを済ませると、例の1010号室に近付いていった。
妙に静まりかえった1010号室の前に立ったその心境は、やはり良いものではなかった。
「ただの噂。ただの都市伝説……」
二回ノックしてから、マスターキーを使ってドアを開け、
「失礼いたします……」
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