たとえばそれがぼくらだということだ

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たとえばそれがぼくらだということだ

気持ちのいい風の吹く星の下。 ふたりはベランダでよく晴れた夜空を眺めていた。 一緒に住み始めて半年になる。 だいぶお互い違和感なく暮らせるようになってきたから、おそらくやっと、恋、なんて甘いエリアを脱したのかもしれない。 「キミ、はい」 サカツキがユウナギに向かって何かを投げる。 「おおっと」 かろうじてキャッチして確かめると、よく冷えた缶ビール。 「珍しいですね、サカツキさん缶ビールなんて」 「このシチュエーションで日本酒はいささかムードにかけますから」 ふたりは手すりに並んでもたれながらプルタブを開ける。 「うまい」 「ええ、たまにビールもいいですね」 昼の火照りを忘れるくらいに幾分涼しくなりかけた風が、頬を撫で髪を揺らす。 しばらく黙ってそんな心地よさを五感で楽しんだ。 ふと、サカツキが何かを思い出したように笑う。 それは甘酸っぱいような笑顔で。 「なんなんです、サカツキさん。何思い出したの?」 「いえね、昔のこと」 「思い出し笑いなんて、サカツキさんHですね」 「思い浮かんでそれが笑えたら、笑うしかないでしょう」 「そりゃそうだ。で、何思い出したの?」 「キミをはじめてみたときのこと」     
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