たとえばそれがぼくらだということだ

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「ああ、俺ケンカしてつかまりそうになったとき」 「ははは。ええ、そう」 「すいません、まぬけで」 「いえ、あれがなかったらいまのぼくはありませんから」 「でもねえ。もうちょっとマシな出会いでもよかったじゃないですか。かっこ悪い、俺。ま、俺らしいっちゃ俺らしいんだけど」 サカツキはユウナギを見て、柔らかく微笑む。 「あのとき、なぜかキミを見たときに。この機会を逃したら、ぼくは一生このままだとおもいました。 いつもの平凡な日常の片隅で自由にやりながらも、誰とも交わらず、毎日新聞を刷るみたいに同じことの繰り返しで、モノクロみたいに生きてるのか死んでるのかわからなくなって、ぼくこのまま埋もれたまま終わるのかな、とおもっていました」 「うん」 「一目惚れ」 「え?」 「ですから一目惚れですよ。ぼくの。あのときからずっと好きです、キミが。一途でしょう」 「いつもながら、よく照れもなく云えますよね。そういうの」 「本当のことですから」 「幸せです。ぼく、とても」 サカツキが空を見上げて目を閉じる。 そんな仕草をユウナギは、そのストレートさに幾分くすぐったくなりながらも微笑ましく見ていた。 「俺もね、すごい幸せなんですよ。これでも」 ユウナギはさりげなくサカツキの肩を抱く。     
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