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月も大分傾きかけた真夜中。
うっすらと空が群青色を帯び出す頃合いでここ、日本の都会付近。国道を走る車の数も減り、人の出入りも疎らな多くの人は既に寝入っている頃か。
その中で、ふらふらと路地通りに入るサラリーマン風の男の影があった。仕事帰りに一杯引っかけたあとなのか顔を赤くしてはふらふらと帰路につく。
そんな彼の背後を一歩、二歩と不気味なほど音もなく近づく影があった。
それを彼は気づくこともない、自分の腹を貫かれ内蔵をえぐられ眼前で確認するまでは。
「うっ……!」
最初は、自分の口から飛び出し手についた血に驚く。
その直後、腹部から突き出た赤い血液滴る肉の塊のようなものが何かに握られているのが鮮烈に目に焼き付き、背中まで引き戻されたところでようやく自分の身に起きた異変に気がつき、倒れた。
「ゲゲゲ……」
影の正体は人間と同じ体格でありながら、頭からコウモリめいた翼を生やし指からは鋭利な爪を伸ばす茶色い肌と言う異形そのもの。
抉りとった内蔵を勲章かのごとく掲げては、悦にでも浸っているのかしばらく眺めそれからどこかへ去ろうとした時だった。
短い破裂音と共に、化け物の足元に銃弾が飛ぶ。
「……」
慌てもたじろぎもしなかったが、何事かと銃弾の飛んだ方を向く、すると続けてもう一発。
化け物はビルの斜面からきらりと光る何かを見つけ、路地の奥へと転がった。
獣が口角から息を漏らし、怪しく顔を歪ませるのを誰にも悟られないようそこから二発、三発と追い込むように奥へ奥へと誘われていく。
「動くな」
化け物は取り潰しの決まった人一人としていない工場。その窓もドアもない角へと追いやられた。
振り返れば一糸乱れぬ統率の取れた動きで全身を真っ黒な宇宙服くらいの重厚な装備で身を固めた集団に囲まれる。
手にはゴツいライフルが握られており彼らは明らか化け物に照準を定めているだろう。
「ギギ……」
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