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首のない重装備の身体が、ただ捕食本能だけで蘇った物言わぬ屍。化け物にやられた屍はゾンビとして甦る。
「うわぁぁぁぁぁっ!」
追い込んだ筈が逆に追い込まれていた。
完璧に不意をつかれた一人の隊員は背後からのし掛かられ、幾ら暴れても銃弾を撃ち込もうと肉体は痛みを感じておらず、骨を砕き肉を抉る程の怪力が掴んでは放さない。
「いやだ……! 誰か」
自分の首がないのを分かっていないのか、ない顔で食う真似だけを行うも爪が食い込み生殺しの状態で、水風船を割るように血が地面に広がって恐怖に声が染まる。
前方では今も化け物が天井から鉄骨を引き剥がし、次々と落としては部下の負傷者は増え対応が追いつかない。
放っておけば次の動く屍が増え、新たな屍を増やす連鎖を起こす。
「……許せ」
意を決した隊長は、ゾンビへ向けて震える手で手榴弾を投げた。
「そん……!」
大きな爆発と共に屍は隊員ごとその身を粉々に散らせる。
その手を血に染めた隊長だが、まだ終わっていない。あの化け物の大元を倒さねばこれを後何回も繰り返さなければならないと止まっている場合でない。
「うおおおおおおおっ!」
やりきれない気持ちを雄叫びに乗せ、ライフルを放つ。
「くそっ! 増援はまだか!」
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