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【ノア】
約束の日まで、あと1年という3月下旬の事だった。
早朝、5時45分。
朝日と共に、地響きを鳴らしながら、その日はやってきた。
「地震……!」
俺は丁度起床時間だった事もあり、すぐに飛び起きた。
だが、すぐにベットへ尻もちをついてしまった。
まるで家が跳ねている。
幸い、身に危険を及ぼすようなものはこの部屋にはない。
暫くして揺れが一旦治まると、俺は階下の両親の部屋へと急いだ。
「一希!」
母が顔面蒼白で廊下に立っていた。
すぐに父も部屋から飛び出してきた。
「2人とも怪我は!?」
「大丈夫だ! それより早く荷物を持ってこっちへ!」
父に言われるまま引越しのために準備していた箱をひとつ抱えた。
「父さん……何処に……」
父さんは廊下の1番端まで行くと、空中に向かって指を動かした。軽く電子音がして、何も無い空間にホログラムのような操作版が現れ、そこへパスワードを入力すると床が四角く切り取られたようにぽっかりと穴を開けた。
こんな所に地下へ通じる場所があったなんて――
俺が惚けていると「何してるの! 早く行って!」と母に急かされた。
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