【ノア】

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 人が2人通れる程の階段を降りると、頑丈そうな扉を父が開けて待っていた。 「ここへ入れ!」 「え? 何ここ……」 「シェルターだよ。40年前に大規模な震災があったのは知ってるな? その後、作ったんだ」 「そんなこと、ひと言も……」  驚く俺の背中をいつの間にか着いてきていた母にそっと押され、部屋の中へ入ってしまった。 「ちょっと待って、父さんたちは!?」  その時、再び強い揺れが起こった。  まともに立っていられない。 「そこは一希のシェルターだ。父さんたちのは別にあるから……」 「安心して。一希」  轟音の中、父が無理矢理扉を閉めていく。  俺は近くの壁に手をつき「父さん! 母さん!」と叫んだ。  だが、父さんも母さんもそれに答えることなく微笑むだけだった。  そして、すぐに扉が閉められた。 「……く!」  堪らず離した箱が床を縦横無尽に滑る。  俺は手摺りを見つけるとそこへしがみついた。  どれくらいの時間が経っただろう。  永遠にも思えた揺れは治まり、静寂だけが俺を包んだ。 「……父さん……母さん……?」  扉まで行って愕然とした。  ノブがない。 「嘘……だろ」  この時はまだ事の重大さに俺は気づいていなかった。  時が過ぎれば向こう側から開けてくれるだろうと。     
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