あの空の色

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 この夏で部活動も引退し、暇なことは暇だが、受験生でもある。  2年で同じクラスになって、帰りの方向が同じ恵里香にはこうして何かと遊びに連れていかれるのだが、正直今は勉強に集中したい。 「いーじゃん。皆、受験勉強、受験勉強って付き合い悪いんだもん」 「俺達だってそうだろ」 「私と一希(かずき)は、模試でA判定出てるし余裕でしょ」  俺は恵里香の腕を引っ張り「そういう事言うな。反感買うぞ」と小声で言った。  何故か恵里香は耳まで赤くなり「わ、わかったよ!」と俺の手を振り払った。 「まぁ、俺はカラオケで勉強するけど、それでもいいなら」 「やった! じゃ、帰りにね!」  そう言って、スキップしながら自分の席に戻っていった。  俺も恵里香には甘いな、と反省する。  恵里香はああ見えて身体が弱い。  心臓に疾患があるそうだ。  その事を知ってから、どうせ家の方向が同じという理由で送り迎えしている。  周りからは付き合ってるんじゃないか、と何度もつつかれた。  恵里香の事は多分どの女子よりも好感を持っている。  けれど、恋愛なんてものは大学に入って、無事に就職してからでも遅くはない。 「あと半年で卒業かぁ……」     
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