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 2042年3月。  俺達は無事に卒業した。  式のあと、担任から配られた卒業アルバムにメッセージを書くという1大イベントが行われていた。 「一希、お前も書いてくれよ」  勉強ばかりしていてあまり友達付き合いをしていなかったが、テニス部で一緒だった小野武志(おのたけし)とは気心が知れた仲だった。 「10年後?」  俺の卒業アルバムの余白ページには武志の文字で『10年後に会おう』と書かれていた。 「皆に書いてんだ。10年後……28歳の皆に会いたいなって思ってさ。皆、夢叶えたりしてんのかなーって」 「40人全員に書いてんのかよ。お前は何目指してんの?」 「俺? 俺は日本を代表するテニスプレイヤーだ!」  俺は武志のアルバムに『テニスプレイヤーとして活躍するのを楽しみにしてる』と書いた。 「サンキュ! ぜってー叶えるわ!」 「楽しみにしてる」  武志が俺から離れると、待っていたかのように恵里香がやってきた。 「私のもお願いしていい?」 「勿論」  俺は迷うことなく『卒業おめでとう 手術、頑張れ!』と書いた。  俺は勿論だが、恵里香も希望する医学部へストレートで合格した。  明日、恵里香は心臓の手術をする。     
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