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そんなに大きな手術とは聞いていないがやはり心配だった。本人はもっと不安だろう。
「はい! 私のメッセージは帰ってから見てね」
と、アルバムを閉じたまま渡された。
思えばこの日が、俺の人生で1番穏やかな時が流れていたような気がする。
大学へ入ると朝から夕方まで授業があり、遊んでいる余裕などなかった。
恵里香の手術は成功した。
あの日、アルバムに書かれた恵里香の告白には未だにきちんと返事はしていない。
それは自分に余裕が無いからだ。
返事をした所で構ってやれないのでは上手くいかないような気がした。
それをそのまま恵里香へ伝えると「わかった。私も余裕ないから卒業したらまた聞かせて」と言われた。
それでもたまには2人で食事をしたり、メールで近況を報告していたりはした。
まさに死にものぐるいで勉強をして、あっという間に6年間が過ぎた。
医師国家試験にも合格し、これから2年間は研修医として働く。
「……お疲れ様でした!」
「おつかれ」
シャンパンの入った華奢なグラスを遠慮がちに合わせた。
大学を無事に卒業した祝いに、恵里香を高級フレンチレストランへ誘ってみた。
「んー! 美味しい! 今までこんなに美味しいと感じた事ないくらい!」
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