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 前菜のフルーツジュレのカルパッチョを口へ運びながら片手で頬を押える恵里香を見てなんだか笑ってしまった。 「束の間の休息だからな。しっかり堪能しないと」 「来月から研修あるしね。本当、休みない」 「そうだな。でもあと2年実績を積めば、夢実現だ」 「そうだね」と、恵里香はフォークを置いた。 「あのね、そろそろ返事を聞いてもいいのかな……」  俺もフォークを置くと、俯く恵里香を真正面から見つめた。 「6年間も待たせてごめん」  恵里香の顔が上がり、その瞳は揺れていた。 「俺は恵里香が好きだし、恵里香しか考えられない。けど、本当に俺でいいのか? 普通の男みたいなデートとか出来ないぞ」 「そんなの私だって忙しいもん。逆に同業じゃなかったら付き合えないって」  俺は「それもそっか」と呟くと、咳払いをひとつした。 「加藤恵里香さん」 「はい」 「俺と……結婚を前提に付き合ってください」  恵里香は何度も頷き、目に涙を浮かべた。  幸せだった。  例え、会う時間が少なくてもお互い高校時代の思い出がある分、不安になんてならなかった。  それからまた2年の時が過ぎ、俺達は26歳になっていた。  俺は大学病院の外科医として、恵里香は市民病院の小児科医として働き始めた。 「あと2年で10年か……」  俺はたまに高校の卒業アルバムを眺める。     
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