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開けた。
部屋には拘束された押見さんがいた。心臓が止まるかと思った。
「…いいよ…ああいいよ!…遠山、逃げんじゃねぇぞ。今からやるから…」
言葉の意味が理解できかった。何がいいんだ、やるって何、そもそも押見さん何で生きてんの!?
「遠山!逃げろ!このままじゃ、お前が危ない!」
押見さんがまだ喋れるってことは幻じゃない。でも、押見さんが心配だから、逃げたりなんてしない。
「…いいよ。うん。押見さん、いくよ。」
池谷さんが押見さんを部屋から引っ張り出してきた。右手には牛刀を持っている。
「なんかある?」
「なにもねぇ。すぐにでもいい。」
押見さんの最期の一言と共に飛び散る赤。その姿はとてもグロテスクで、冷や汗が止まらなかった。池谷さんは、笑顔で涙を流しながら、何かを呟いている。その間も、牛刀の動きが止まることはない。何か気を紛らわせたくて、とりあえず伊藤にメールした。
「あめあめあめあめあめあめあめあめあめ…」
雨がこの赤も洗い流してくれればいいのに。
「ほら、遠山。これが心臓だ。」
そんな残酷なもの、見せないでくれ。もう、全てが赤に見えた。同時に、意識を手放した。
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