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「要 淳太。」
頭を垂れる淳太の背後から、淳太を呼ぶ声がした。
振り返るとそこには夕日を背負った女性徒の姿がった。
「生徒会規則第27条 登下校について。」
生徒会規則を淀みなく読み上げつつ、
夕日の中を歩み寄る女生徒の影。
その声はよく聞く、そして間違えようもない声だった。
「生徒会会員は、登校の際には速やかに登校し、
また下校の際にも速やかに下校する事。」
夕日の陰から覗く横島 亜心の笑顔が
淳太の心を優しく照らした。
「アコ……。」
アコは淳太が座るベンチの背もたれに手を置くと、
活を入れるように言った。
「ほら、淳太!
寄り道しないでさっさと帰りなさいよ。」
しかし、淳太は前を向き直し
再び視線を落とす。
「顔……上げられないんだ。」
淳太は陰鬱な表情のまま
虚ろな目で地面を眺める。
「いまでも顔を上げると、そこに淳太がいるような気がするんだ。」
淳太のその言葉に、アコは胸が締め付けられるような思いがした。
目の前で親友を失った痛みはいかばかりか。
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