やらない、とは言ってない。

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「イヤッッホォォォオオォオウ!!!」 奇声をあげて前のドアから教室へ入ってくる少年。 ショートホームルームを 間近に控えたクラスメートたちの視線が 一点に集る。 朝の有名人となった少年は 回りの好奇の視線を物ともせず 自席へと着く。 自分の世界に浸るその様は、 さながら妄想中の恋する乙女だ。 その様子を心配して、 前の席の少年が声を掛ける。 「どうしたんだよ、淳太(じゅんた)? また宿題でも忘れて気が動転したのか?」 淳太と呼ばれた少年は口の端をあげて、 前の席の少年に視線を預ける。 「ん、ふっふふーん!」 「ぎょッ!」 崩れるまでににやけた顔と 謎の擬音を含んだ笑い声。 あまりの淳太の浮かれ具合に、 思わず驚きを声に出す友人の少年。 「見て驚くなよ、琉生(るい)? じゃじゃーん。」 口で奏でたファンファーレとともに 淳太はポケットからスマートフォンを取り出してみせた。
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