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それ、分かる…とか思って。
俊くんは冷たいけど優しい。
突き放した言い方をするくせに、
実は全てを受け入れているのだ。
「…のさん?佳乃さん、
もう朝礼が始まりますよ。行かなきゃ」
「え、うん。ごめん、ボーッとしてて」
「そう言えば今晩ですよ、ビアガーデン」
「もちろん忘れて無いわよ。
モリモリ食べちゃおうねッ!」
…我が社のクライアントでもある
大手食品チェーンが、
割烹料理店と提携しビアガーデンを開業。
こういった季節限定の仕事は、
数字を出さなければ次の依頼を貰えない。
だからこうして誘い合い、
何人かでグループ分けして利用するのだ。
ウチの課からは10人ほど参加予定で、
その中に私と那月ちゃんも含まれる。
……
もちろん、この人も。
「めっずらしいィ。
滝口主任が泥酔するって、
飲ませ過ぎだろ那月ちゃん」
「ひっどーい、保津さんったら。
主任が勝手に飲んだんですゥ」
ビアガーデン特有の、
軽くて座り心地の悪い椅子。
背もたれも小さいため、
酔って眠り出した滝口主任が
隣席の私に寄り掛かっている。
このビアガーデンはビュッフェ形式で。
料理を取りに行っている間に、
保津さんが勝手に私の席を奪ったせいで、
こうして主任の隣席になってしまい。
案の定、微妙に気まずくて、
主任がビールをガブ飲みし、
このような結果になってしまったのだ。
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