[佳乃編]プロブレム

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よきパパでもある保津さんは、 女性の見方がもう父親目線らしく。 ドヤドヤと入って来た女性たちを一瞥し、 こう評した。 「うわあ、あんな胸が半分見える洋服、 娘が着たら家に閉じ込めて出さないな」 残念だが私の真後ろの席に座ったようで、 その姿を眺めることは出来ない。 プン、とむせるような香水の匂い。 飲食を楽しむ席に そんなものを振りかけてくる時点で、 どんな女性かは想像に難くない。 「ツレの男性陣はイケメン揃い…って、 あれ??俊さんかも」 那月ちゃんの言葉に振り返ろうとするが、 酔った滝口主任の腕が私の背中に回り、 まったく全然、動けない。 …なので仕方なく目だけ動かす。 どうやらコンパらしい。 男性陣はこちらに背を向けているので 真偽のほどは不明だが、確かに1人、 それっぽい男性の後姿が見える。 その男性が不機嫌そうにこうボヤく。 「なんだよ、お前ら。 単なる『飲み会』とか言ったクセして。 俺を騙しやがったな」 「だって普通に誘っても来ないだろ? そこのアヤちゃんが井澤に一目惚れして、 是非紹介して欲しいんだと」 …井澤。 ん、確かに俊くんだな。 私と那月ちゃんは目と目で会話し、 小さく頷いた。 その瞬間、滝口主任が目覚めたらしく こう言うのだ。 「佳乃ォ、水をくれよ」
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