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どうやら、そんなワケあったみたいだ。
それはもう分かり易く、
那月ちゃんの頬が真っ赤に染まる。
「…な…るほど…。
そりゃあ決着を早くつけてって言うよね。
そっか、気が合ってたし、2人とも」
なぜか那月ちゃんはそのまま無言で、
ジェスチャーでしか答えてくれない。
ヒラヒラと左右に手を振るのは、
『そんなことないよ』という意味だろう。
「で、でも、俊くんにしては珍しく
最初っから打ち解けていたと思う。
じゃ、じゃあさ、次の飲み会、
私は途中で抜けるよ。
その後、那月ちゃん頑張ってみて」
そう提案すると、
那月ちゃんは胸の前で両腕をクロスさせ、
思いっきり『X』と意思表示してくる。
「だっていつも3人で会ってるし。
2人きりでないと見れない表情も
きっと有るはずだよ?
どんなにイヤと言ってもやりますからね」
我ながら良い案だと思ったから、
本当にそれを実行したのに。
……
「なんか急用が出来ちゃって。
ごめんね私、先に帰るわ」
「え、ああ、じゃあ俺も」
へ?
予想外の言葉に、固まる私と那月ちゃん。
「それは那月ちゃんに悪いから。
俊くんはココに残ってよ。
私はタクシーで帰るから大丈夫」
「えっ、でも…」
バチンと那月ちゃんにだけ見えるように
ウインクし、慌ててそこから立ち去る。
そこから結構、走ったと思う。
大通りに出て、
ゼエゼエと肩で息をしていると
誰かにポンと背中を叩かれた。
振り返るとそこには…。
「しゅ、俊くんッ?!」
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