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翌朝。
那月ちゃんに詫びようと思ったが、
何をどう詫びれば良いのかを悩む。
しかし、悩むタイミングが遅すぎた。
「佳乃さん?
呼び止めておいて無言って、ヒドイ」
「…だよねえ」
俊くんが私を追い掛けてゴメンって?
ひとりにしてゴメンって?
どれも何だか感じ悪い気がする。
でも謝らないのもどうかと思うし。
結局、再びの沈黙。
それを見かねて那月ちゃんが口を開く。
「だから失敗するって言ったんですよ。
私と佳乃さんだったら、
佳乃さんの方を選ぶんだから、俊さんは」
「うっ、ゴメン」
…那月ちゃんと私の差は、
こういうところなのかもしれない。
私なんかは他者との付き合い方を
『短期』で考えているのに比べ、
那月ちゃんはその逆で『長期』だ。
俊くんの件に限らず、
どんなときでも人間関係を大切にし、
少しでも綻びが出れば修復しようとする。
那月ちゃんの方から
切り出してくれたお陰で素直に謝ると、
彼女はこう言うのだ。
「…でも大丈夫。
佳乃さんは和真さんと結婚するでしょ?
そしたら傷心の俊さんにつけ込んで、
一気に落としてやるんです」
…その言葉に胸がモヤモヤする。
和真に対して何の不満も無いのに。
私には勿体無いほどの男性なのに。
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