[佳乃編]プロブレム

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「那月ちゃんは 俊くんのどこが好きなの?」 私の問いに薄っすら頬を染めて答え出す。 その表情は正に『恋する乙女』だ。 「俊さんって真っ直ぐなんですよね。 なんか変なんですけど私、 俊さんの言葉が全て金言になるというか。 こう、胸に響いてしまうんですよ。 例えばかなり前に3人で飲んで、 帰りにコンビニに寄った時のことです。 レジで会計したら くじ引きが出来ると言われて、 キャッキャと騒ぎながら引いたでしょ? で、何か忘れたけど当たって、 酔った勢いで店員の若い男のコに いろいろ話かけたら無視された。 店を出てから私がその態度を怒ったら、 俊さんが言ったんですよ。 『あのさ、そんなに期待すんなよ。 だって本来は買い物が目的だろ? 金払って商品が貰えればヨシとしろよ。 求めすぎるんだって。 店員は笑顔でいろとかさ、 どっかの高級ホテルじゃあるまいし。 サービスがウリじゃないんだぞ? あのコらさ、結構時給やっすいぞ? 長時間、立ちっぱなしで、 そこにいてくれるだけでもスゲエと思う。 客だからもっと愛想を良くしろとか そんな要求を最初からしなければ、 たぶん双方とも快適になれるんだよ』 …って。 俊さんは基本、冷たいんです。 とんでもなくヒエヒエなくせに、 なのにどこか優しいんだなあ」
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