優しさ満ちる

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「お父さん!」 叫びながら居間に入ると、遺影を見ながら父は泣いていた。 「お父さん……」 父はすぐに涙を拭って、何事もなかったように、 「ん?どうした?」 無骨な表情をつくって私に問い掛ける。 私は父の隣に座ってアルバムを開ける。 「お母さん、最高の笑顔でしょ」 いろんな母を父に見せる。 「そうだな」 素っ気ない態度をつくり続ける父に、 「このアルバム、お父さん全く写ってないけど…… それはお父さんが私達を撮ってくれていたからなんだね」 「ありがとう」とお礼を言った。 「何を今更そんな……」 恥ずかしいのか、表情を崩すのを拒むようにお酒を呑む。 父は私に、強い父である事を見せたかったのだろう。 アルバムをもう一度父の目の前へ。 「お母さんのこの笑顔作ってたのはお父さんなんだね」 「なっ、何をバカな事を……」 照れ臭さでアルバムから目を外して私を見る父を、 カシャ! 携帯電話で写真を撮った。 いきなりの事でビックリしている父に私は告げた。 「私は…… お父さんとも想い出を撮りたい」
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