優しさ満ちる

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次の朝、 「お母さーん、手伝いに来たよ」 土曜日という事もあって、夫と娘達が手伝いに来てくれた。 夕方までかかったが何とか片付き、夕食は出前を頼んだ。 「ねぇ、出前が来るまでまだ時間もあるし、表で写真撮らない?」 私の提案に夫と父は渋ったが、 「いいねー」 「撮ろう撮ろう」 娘達に押し切られ皆んなで玄関へと出た。 「わ、ワシが撮ってやる」 父は私の携帯電話を取り上げた。 この後に絶対に父も撮ってやる、そう思って一枚目の写真は任せる事にした。 玄関前に私達家族が並ぶ。 娘達はピースサインをしながら自分達の最高の角度で待ち、 「お、おい……」 照れ臭そうにする夫の腕に私はしがみついた。 「撮るぞー、はいチーズ」 シャッター音は鳴らずに、父は携帯電話を見回している。 皆んなは一旦ポーズを解いて、機械音痴の父に操作を教えようと近付いた時、 カシャ! シャッター音が鳴った。 「あっ……」 「変なとこで撮らないでよー」 祖父に膨れる孫の声が響いたところで、 カシャ! またシャッター音が鳴った。 確認すると全員が笑うとても良い写真だった。 「もうー、私が撮るよ」 長女が父から携帯電話を取り上げ、 「お母さんとお爺ちゃんで撮りなよ」 「い、いや、ワシは……」 次女に押し切られた。 「いくよー。 1+1は……」 「ニッ」 父と私、親子で微笑む初めての写真。 この写真をあのアルバムに貼ろう。 そして撮り続けよう。 あのアルバムが優しい笑顔がいっぱいになるまで……
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