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【四月】
「うーん」
ハニーブロンドの髪を摘み上げて、少女は唸る。
その髪は染めた訳ではない、生まれつきのものだ。顔立ちは日本人だが、透けるように白い肌と相まって、ハーフでも通用しそうだった。
「伸びすぎだな、そろそろ切ろう」
サラサラのストレートヘアは、臀部の下まであった。
隣に座る少年が、手を伸ばしその髪を一房取るとくるくると指に絡ませる。それは少年の癖みたいなもので、隙あらばそうしていた。少年は少女の金色の髪が大好きだった。
「もったいない、綺麗なのに」
「でももう邪魔な長さだよ、座る時にいちいち持ち上げないと」
少女は臀部とベッドに挟まれた髪を払った、ベッドが小さく軋んだ。
わざとなのか、髪を絡める指が、度々少女の耳朶に当たる。少女はくすぐったさに体をぴくりと震わせた。
その反応に少年は微笑み、髪を後頭部の方へ寄せると、体を寄せ耳輪に唇を押し当てる。
少年の癖のある黒髪に少女は指を埋め、次に来る甘い時間を期待して身を委ねようとしたその時。
「あ、そうだ」
少年は急にベッドを軋ませて立ち上がった。
「え?」
「忘れないうちに」
少年はソファーに放り出してあった鞄から、小さな箱を取り出し少女に差し出す。
「え?」
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