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蝉が激しく自分の生を全うしようとしている夕方の公園に私はベンチに座っていた。公園には毎日ある用事で立ち寄っているが、こうしてベンチに座ったままうなだれるのは初めてだ。
「まさかこういう発想があったのか……」
ベンチにうなだれた私の独り言は蝉の懸命な鳴き声にかき消された。私一人の存在など蝉の中では無に等しい。だが、彼なら違うのかもしれない。そう、私の固定概念を打ち破った彼なら蝉の中でも輝けるかもしれない。そう感じずにはいられないのだ。
私が公園に来始めたのは大学が夏期休暇に入る初日だった。バイトもなく退屈そうに公園を歩いていると1人の少年が声を掛けてきた。
「すみませんが、もし暇でしたら遊んでくれませんか?」
年齢に似合わないその口調が気になったが快く了承した。子供と遊ぶのは昔から好きだからだ。だが、子供が提示した遊びは今まで私が遊んだことのないものだった。
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