大学生の夏休み

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 即興劇遊び。簡単に内容を言うのなら人形のない人形遊び。もしくは全くと言って良いほど筋書きのないドラマを即興で演じあっていくようなものだ。 「すみません。今、何時ですか?」  まず始めに彼が演じ始める。それに対して私はこう返した。 「次の列車が発車するまで、あと1時間もありますよ」  彼には悪いがこのまま時間を単純に教えれば物語は終わってしまう恐れがあるので、無理矢理不可解な物語へとご招待した。だが、彼は引き下がることはなかった。 「そうでしたか、教えてくださりありがとう。教えてくださった礼に御茶をプレゼントさせてくれませんか?」 「新手なナンパですか?」 「おや、バレましたか。実はお恥ずかしい話、私はナンパするのが初めてでして、直接誘うことが出来なかったのです」  こうして全くもって設定の見えない即興劇は2時間も続いた。だが、この劇の終わりは唐突にして訪れた。 「かっちゃん。そろそろ帰りますよ」 「はい、お母さん」  彼は私より倍近く年を取った女性に返事をすると「お姉さん、遊んでくれてありがとう。また遊んでくださいね」と言って去っていた。二時間もの間、不思議な世界に閉じ込められていた私は彼の独特の雰囲気を感じていた。だからだろうか、私は暇さえあれば公園に足繁く通った。
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