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密着して、自分が今、ベッドのシーツを巻き付けただけの姿だと思い出す。
「体のラインが見えちゃうね、俺だけ見るならいいけど、誰にも見せたくはないな」
「もう紅豪に見られてるけど」
「紅豪は一人に入らないからいいの~」
「はぁ?どんな基準だよ…」
「んふふ、わかんない」
「……」
さっきから王牙の羽が閉じたり開いたり忙しない。ゆるゆる、腰を撫でられて、何だか安心する。自分を抱き包むように屈めて、鼻を首筋にスリスリされて、思わず身を任せそうになって、急いで手を突っ張る。
「っ、で!花嫁って!」
「決まってるだろ、アタルの事じゃないか~」
「嘘つけ!知ってるんだぞ、光風とか言う奴じゃないのか白状しろ!」
「、何で、その名前」
「紅豪が俺をその光風、と間違えた……けど、いずれ隠してた事なんてバレるんだ、いいか、魔王だからって「アタル」
急に静かな声が降る。花畑の花弁が、風に舞って、空に上がった。それと同時に、大きな翼を広げた王牙を見て、その圧に、言葉を失う。一瞬、王牙が悪魔に見えた。でも本当に一瞬。次に表情を崩して笑みを浮かべて、俺は王牙の腕の中に、優しく捕らわれた。
「そうだね、いずれ隠してた事なんてバレる。でも、隠してた訳じゃないんだ、本当だよ」
「……お前は隠し事が多すぎるよ…悪魔とか魔王とか、俺が妊娠してるとか」
「ごめんなさい……だって、アタルが混乱するかなって思って……ちょっとずつ、言おうと思ってたんだけど、……えっと、我慢出来なくなっちゃって、その……」
「それで妊娠したと?」
「う……ごめん」
目を泳がせながら言う王牙が可愛い。図体でかくて角も生えて厳つい分、更に可愛さが増している。けど、流されてはいけない。
「光風、……は、聞いちゃいけない事?」
「どうして?そんな事ない、ちょっと説明するのに苦労するけど……、アタルにはちゃんと話さなければいけない事だ」
「……そっか、何かその言い草だと浮気とかじゃなさそうだな」
「勿論だよ!浮気なんかしない!なんなら今ここで俺の愛を全部アタルに注いだっていい!お腹気遣いながら!」
「それは遠慮しとく!」
「なら、キス、キスだけでも」
「……待ってお前、紅豪がいるんだけど!?」
「あ、お気になさらず、水上げて参るで御座るよさらば」
「さらばしないで!」
ジョウロを掲げて笑顔で去って行く紅豪。
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