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俺の名前は御門アタル。極々普通のゲイで極々普通の人間でマジで普通の人生送った、普通の……まあ男だ。職業はバイトを転々とするフリーターで、歳は23。まだまだ心は学生気分。けどちょっと焦ってる、そんな日々。そんな俺には2歳年上の彼氏様がいるんだけど、まあ彼が本当野暮ったくてノロマでマイペース。背丈がでかいから余計なんだけど、でも俺にはそれが可愛くて仕方無くて愛しい存在だ。
彼の名前は閻魔王牙。珍しい名前だなと思いはするけど、どんくさい彼に似合わずな厳つい名前に面白さの方が勝る。王牙はどこかハーフめいた顔をしてるから、もしかしたらハーフなのかもって思う。
「あ、あたる」
「はいはい、どうしたの?また携帯壊しちゃったの?」
「会社の書類がどこか行っちゃって、見てない?テーブルに置いたような気がしたんだけど、見当たらなくて……どうしよう」
今日もまた、王牙様の出掛けるギリギリの騒動が始まった。そう言えばトイレの後ろに何か紙がバラバラ落ちてたけどまさか?
「王牙、トイレで書類見てたりしてないよな?」
「え、……あ~!それだ!ありがとうアタル、やっぱりアタルは最高だー」
「俺先に行ってるよ~バイト遅れちゃう、ん、」
大きな手で顔を挟まれて、唇に、合わせるだけのキスが降る。長い前髪が額に掛かって、細めた視線に捕らわれて、ほんのり耳が赤くなる。
「行ってらっしゃい、気をつけてアタル」
「うん、行ってきます…」
ガチャンと扉を閉めてから、急激に上がる体温に、顔を両手で挟んでヘナヘナと座った。
王牙はどんくさい。会社でも新人にタメ口言われる位に出来ない人間らしいし。けど、だけど、あの長い髪で皆気付かないだろうけど、凄くハンサムで格好良いんだ!ベッドの中じゃ獣、いや野獣、悪魔、とにかく心も体もドロドロに溶かされる位には愛されすぎて、キス一つで昨日の情事を思い出してしまって大変だ。
彼に会う前の自分は何も知らないお子様だった、と思う。
とにかくそう、言いたいのは、俺達は、彼氏が普段はどんくさいけど夜は凄まじいってだけで、極々普通の恋人同士だと思ってたんだ。
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