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「所で、王牙はどこ行ったか知ってるの?」
食事も粗方片付き、紅豪が食器を重ねる音が響く。
寝て起きて抱かれて寝て、居ない。訳も分からずこっちに連れて来られてから、ゆっくり説明もされぬままに、人……じゃないにしろ、他人から妊娠しただの言われるし、本当なら王牙が言うべき事じゃないのか、とマジで思う。
「魔王様は…多分方々に出ておられるのでは、と思われますが」
「方々?」
「花嫁を自慢する手筈を整えておるのだと思いますよ」
「は、花嫁!?王牙、花嫁がいるの!?」
「…………えぇ、」
「やっぱ浮気だったのか!俺は遊ばれて…もしや美味い物食べさせてから太った所を…」
「?アタル殿、魔王様の花嫁と言ったら一人しか……」
「アタル~!!」
能天気な嫌に明るい声がした。
一体どこからだ、まさか上から飛んで来るのでは。色々考えたけど、王牙はまさかの花畑から空間を歪めて出てきた。
それを目の当たりにして目をシバシバさせてから、ハッとして、両手を広げて向かって来た王牙から逃げるように紅豪の背に隠れる。
「え!?あ、アタル、」
「近寄るな浮気者め!」
「あの、王牙様これは誤解で御座りまして、」
「う、うわき?」
「花嫁を自慢する為に手筈を整えてるって聞いた!花嫁がいるなら、何で俺を連れて来たんだよ…」
潤む目を堪えて王牙を睨みつける。こっちは真剣に聞いてんのに、王牙は何か変な表情してる。いつも腑抜けた表情してるけど、今はいつも以上だ。
「か、か、かわいい!俺のアタルは世界一可愛い!!」
「、おい!今更持ち上げた所で、浮気は許せないからな!」
「アタル、解った、説明するから、紅豪の背中から出てきてよ」
「……」
「アタル殿、ちゃんとお話しされませぬと、もし王牙様が浮気をされていたとしても、お子の親権や養育費諸々、お話しは必要で御座ろう」
「……う」
「はは、紅豪、何かちょっと楽しんでるよねお前」
仕方がない、出てやる。子供の為にな!
紅豪の背から出て前に出る。よく見ればカッチリした服を着ている。洋式ばった軍服にも似た服だ。本当に何処かに行ってたみたいだ。長い髪を束ねて、でも相変わらず前髪は長い。
見ていたらいつの間にか伸ばされていた手に腰を引き寄せられていた。
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