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興味深く触れていたら、フワッと温かい空気が体を包んでビクリとする。
あれ、いつの間にか風呂場に居るんだけど。
「服脱いでくるから待ってて」
「ま、え?一緒に入るの?てか、ちょ、シーツ濡れちゃっ」
「シーツはちゃんと巻き付けててよ、我慢効かないから」
「、ッ!」
シーツごと湯船に入れられて、扉を閉められる。我慢効かないって、なら一緒に入るなよ!
色々言いたいのを堪えて、お湯をブクブクしてから風呂場を眺める。言っていた通り本当に広いな、と吐息を吐く。
屋根はガラス張りで、見た事無い植物が覆う。昼間は曇っているような空だったけど今は星がチラチラ見えて綺麗だ。何かオーロラみたいのも見えるけど気のせいだろうか。魔界なんて何でもありか。
よく見ると湯船も色んな色がごちゃごちゃ混ざって見える。
カラカラと戸が開く。王牙が入って来たんだな、と思って、ちょっと前に体をずらそうとしたら肩に腕が回ってそのままザパン、と入って来た。後ろから抱き締めるように一緒に入ってる。こっちとしてはあんまり気が抜けないんだけども。
「アタルどう?良いお風呂でしょ?はぁぁ…気持ちいい」
「……」
肩に顎を乗せられて、すり寄られる。
「本当に何もしないよ、固くならないで……アタル」
「……本当だな」
「うん、本当」
振り向いて、小さくキスをされる。お腹を優しく撫でられて、やっと肩の力を抜いた。
リラックスして体を預けると、こんなに安心出来る場所は他に無いって思う。やっぱり、俺も心底、王牙が好きらしい。
「明日は……会わせたい人が居るんだ」
「会わせたい?」
「いつ会えなくなるかも解らないから」
「……忙しい人?」
「うーん、会ってからのお楽しみ。それで、色々話したい事もあるんだ」
「……そっか」
話したい事。話していない事。
それは多分、光風の事。誰だかは知らないけど、多分俺に似ていて、人間で、悪魔と知り合いだったのかも。そうなると王牙ともきっと。知りたくないような、知りたいような。
湯船に揺れる湯気のように、俺の心もユラユラして、お腹に回る王牙の手に自分の手を乗せる。直ぐに繋がれた手に安心したのも束の間。湯船の中で不穏な動きを見せるもう片方の手に真顔になり、直ぐ後ろにある王牙の顔目掛けて、頭を後ろに勢い良くぶつけてやったのだった。
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