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君は誰だ。こんな所にいたら危ない。
女の子の頭には二本の角が生えている。垂れ目で、可愛い。どこか王牙に似ている気がする。王牙に妹なんていたかな。
『まま、ぱぱをきずつけちゃダメよ』
「え、?」
それだけ言って、スカートを翻して走って行ってしまう。
まま、ぱぱを傷付けちゃダメよ
言われた事を何度も頭の中で繰り返す。手が自然とお腹に回って、優しく撫でた。女の子だった。急いで顔を上げた。けどそこにはもう、子供の姿も剣の姿も無い。ただ王牙に、強く強く抱き締められている。
「何をしているヴェロウ!誰でもいいから殺してしまえ!」
「ウゥウウアアアアア!!!」
「王牙っ」
「アタル、」
「良かったアタル様、正気に……では私は、屈辱を晴らして参ります、」
「、黄金さん、ダメだ、危ないよ」
「えぇ、ですが、もし私がここで死んでも悲しまないで下さい。私にはもう愛する人がいない。貴殿方は、幸せであるべきです」
「黄金さん!」
そんな悲しい事を言わないで。死んではダメだ。残された者の辛さを悲しみを、俺は見て知っている。光風の思いというより、俺が光風でもあるんだって、やっと解った。光風として生きていた時もあったんだ。そして今、俺は俺として生きて、王牙と出会って、命を授かった。森が全てを見せてくれたみたいだった。正気に戻れたのは、あれは、俺達の……。
「アタル!俺から離れないで!」
「けど黄金さんがっ」
「大丈夫、今見ていて解った、ヴェロウは、漆史だ」
「、漆史?」
「漆史が黄金を殺す筈がない」
回りでは紅豪達が隙を見て、黄金さんを誘拐した一味を取り抑えていた。
形勢逆転する中で、銀珠が慌て出す。
小さな悪魔が地面からボコボコと顔を出して、異様な光景に王牙にしがみついた。……とんでもなく気持ちが悪い。
「ふふ、もっとくっつかないと子悪魔に食べられちゃうよ~」
「……」
さっきまで不安そうにしていた癖に直ぐこれだ。それに、子悪魔は一定の距離から近くには来ない。多分王牙が何か結界のようなものを張っているのかもしれない。
「こんな事してるなら黄金さんを手助けしてやればいいのに」
「俺は二人を守るので精一杯だよ」
「……二人」
「うん、二人」
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