男前にプロポーズ……なはず

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「魔王様!後処理はまだまだ残っておりますぞ!さあさこちらに」 「嫌だあ!アタル~助けてぇ」 「……魔王の仕事は流石に出来るよな?書類トイレの後ろとかにやるなよ絶対……ん、?」 嫌々言う魔王に釘を刺してる時に、少し出てきたお腹の中で動く気配がした。その様子を見た王牙が即座に目の前でしゃがみ、お腹に耳を当ててくる。 「動いたの?」 「?……んー、多分」 「確か、女の子だよね」 「森で見たのは……でもあれが本当にこの子なのかって言われると解らないよ」 「多分この子だよ……力を引き継いでいるとしたらね」 森で見た女の子。垂れ目で王牙に似ていて、可愛くて。俺をまま、って言っていた。俺達の結晶は、世界一可愛い女の子だ。 「名前、どうする?」 「ん~女の子なら、そうだなあ……えぇと、……ジュエリーボックス、とかどう?」 「………………マジで言ってんの?」 いつまで座ってんだ、早く仕事しろ、って王牙を蹴った。 にしてもまだ2ヶ月もたっていないだろうに妊娠してからこれは早すぎないだろうか。回りが落ち着いてきた中で段々と自分の現状に気付き始める。 誰かに相談してみよう、と思うのだが思い当たるのは黄金さんぐらいしかいなくて、明日聞いてみようとお腹を擦った。 「悪魔は確か、人間の半分の期間で産まれると聞いた事があります。ハーフであっても悪魔の力は強いので、順調だと思いますよ。それに加えて魔王様の血統ですから、こちらの普通よりも早いかもしれませんね」 「そうなんだ……それって大体何日?」 「5ヶ月か、4ヶ月か、ちなみに王牙様は一ヶ月で産まれておいでです」 「い、一ヶ月!?」 とんでもない事をサラリと言って、風車の回る草原で体に優しい物です、と様々な配色の食べ物を勧められる。食べると美味しいんだけど、この配色何とかなんないのかな、って本当に思う。 しかしあの王牙が一ヶ月で産まれたとは。とんだスピード出産だ。 「ですが……王牙様の母様は、体が持たず体調を崩し直ぐに亡くなってしまわれました。先代の魔王様は心が無いような御方でしたから」 「……その人の力を、王牙は飲み込んで消滅させた……」 「ええ、そのお陰で今があります」 光風が死んで、王牙は悲しみに暮れた。それでもきっと、国を再建する為に、人になって人間界に降りたんだ。長い年月の間に人間界も平和が訪れて、俺を見つけた。
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