貴方は人間で君は金の竜……のはず

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貴方は人間で君は金の竜……のはず

足元に小さな鬼が張り付いてくる。 目の前の黒い鬼は、赤い模様を浮き上がらせて唸っている。私は貴方に命を奪われる。そうしてやっと、愛した人間の元へと行けるのでしょうか。 漆史、男は愛せないと貴方は言っていた。だから友になろうと誓いました。そして貴方を守る竜になる。 竜人は利用されるのが生きる定めだった。見目麗しい者は男も女も悪魔に回された。時に戦場へ、時に夜の相手として。けれどその芯は絶対に腐りはしない。産まれてから死ぬまでに竜の姿を見せる相手に出会える事など、本当にあってないような、奇跡に近い事。そんな奇跡が私に起きた。 「漆史、もうすぐそちらに行きます」 悪魔を心底嫌いな貴方を説得するのは大変でした。けれどあの日々は楽しかった。光風様、言われた通り、王牙様は立派な魔王になられました。もう私がいなくとも、アタル様がいる。悔いはない。 最後はきっと一瞬だと思った。けれど景色が一瞬にして赤みがかった何かに変わる。誰かの呪縛に入ってしまったと直ぐに解り、案の定、後ろから羽交い締めにするように銀珠が表れた。 「なあ、お前は竜だろ?」 「!だから、何だと?」 「いいことを聞いたんだよ、バカな魔王と人間が、聞かれているとも知らないで」 何の事を言っているのだろう?それから、何故呪縛の中にヴェロウがいるのだ?彼も呪縛にかけられて苦しみ呻いている。味方じゃないのか?私はあれに殺されるとばかり。 「見せ付けてあげようか、漆史に」 「……、?漆史?」 「ヴェロウの正体だよ。あっちで二人で話していたよ、漆史だそうだよ」 「、……そんな、嘘です」 「さあね、本当だったら楽しいよね、今から目の前で友人が悪魔に犯されるんだから」 ゾッと背筋が凍る。首筋に舌が這わされて、気持ち悪さに目を瞑り、歯を食い縛った。 「悪趣味な奴、めっ」 「誉め言葉だね、悪魔はこうでなくちゃ」 顎を抑えられて上を向かされる。目の前で呻く、鬼の角が生える黒い生き物が本当に漆史だと言うのか。だとしたら何故そんな姿になったのか。記憶は?まるで獣みたいだ。 「君が犯されたら、もしかしたら元の彼に戻るかもしれないね。けれどその時君は、屈辱にまみれて泣き叫んで許しを請うているか、もっと欲しいとねだっているか」 「バカにしないでください、私は……こういう事に慣れている」 「そうか?ならこちらも手加減せずに存分に楽しむとするよ」
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